PTEeXAMの傾向と対策(2) [TEE]
来年のSCAはMontrealなので,PTEeXAMもMontrealでの開催になるか,
あるいはDallasになるか。
私が受けた2004年はDallasで,2005年はBaltimore,2006年はDallasでした。
もしもDallasなら,日曜日が試験なので金曜日に入るとまる一日ゆっくりできます。
どんな勉強をしたか
@A Practical Approach to Transesophageal Echocardiography
A. C. Perrino, Jr.ら編(2003 Lippincott Williams & Wilkins)
これは必読といっても良いと思います。必要な内容がコンパクトにまとまっていますし,疾患に対してどのようにTEEでアプローチするかが書いてありますので,とても役に立ちました。章末に練習問題がついているのも良いですね。
私は前日の晩に試験のリハーサルがてら,全部の章の問題を続けてやってみました,
A Practical Approach to Transesophageal Echocardiography
- 作者:
- 出版社/メーカー: Lippincott Williams & Wilkins
- 発売日: 2003/05
- メディア: ペーパーバック
@Textbook of Clinical Echocardiography 3rd ed.
C. M. Otto(2004 W. B. Saunders)
これは基本的には経胸壁のエコーを中心に書かれた本ですが,基礎から応用まで,エコー所見から疾患をどのように考えるかより詳しくかかれています。A Practical Approach to TEEだけだと基礎の分野,病態や疫学,診断のところが足らないので一冊TTEの本を持っていると良いと思います。かといってFeigenbaumや臨床心エコー図学は大きすぎるし,高い。Ottoは手頃で読破可能です。
Textbook of Clinical Echocardiography
- 作者: Catherine M. Otto
- 出版社/メーカー: W B Saunders Co
- 発売日: 2004/08
- メディア: ハードカバー
@経食道心エコー法マニュアル 改訂第3版 渡橋和政(2000 南江堂)
分かりやすいレクチャーでもお馴染みの渡橋先生のお書きになった教科書です。 どのように断面を描出するか,そして描出のコツが詳細に書かれており,日常の臨床にとても役に立ちます。独学で学び始めた頃から愛読しています。
@Clinical Transesophageal Echocardiography A Problem-oriented Approach 2nd ed.
S. N. Konstadtら編(2003 Lippincott Williams & Wilkins)
この本は試験の後に買いました。臨床で遭遇する問題へのアプローチが詳しく書いてあります。
Clinical Transesophageal Echocardiography: A Problem-Oriented Approach
- 作者:
- 出版社/メーカー: Lippincott Williams & Wilkins
- 発売日: 2003/10
- メディア: ハードカバー
@TEE An Interactive Board Review on CD-ROM
D. S. Morseら編(Lippincott Williams & Wilkins)
ビデオ問題はこの問題集をやれば十分対応できます。同じ問題が何度も出てくるKey term modeがお薦めです。試験と同じ形式のexam modeも有効と思われますが,Macではexam modeがあまり上手く動かないので使いませんでした。
@Annual Comprehensive Review &TEE update: Clinical Decision Making in the Cardiac Surgery Patient
毎年2月にSan Diegoで行われている6日間にわたるTEEの講習会です。最初の3日間が基礎編で,後半の3日間が応用編といったところ。基礎編の最後にWet Labがあり,豚の心臓を解剖して理解を深めることができます。全て参加すると15万円かかりますが,行く価値は十分にあります。
@Dr. SONOの公開講座「超音波の基礎」
同僚からこのページの存在を教えてもらいました。超音波機器を作っている東芝が作成したもので,超音波の基礎がShockwaveを用いて分かりやすく解説されています。心エコーの分野だけではないのですが,とっかかりには良さそうです。
英語の本ばかりですが,本番の試験は当然英語なので,英語の用語に慣れるという意味からも英語の本で勉強することをお薦めします。ただ,超音波の基礎の部分に関しては,最初は日本語で勉強した方が良いと思いました。
慶応大学(現市立函館病院)の田川先生もPTEeXAMの対策を書いておられます。とても参考になりました。
もちろん,日本のTEEの講習会も十分役に立つと思います。やや手前味噌になってしまいますが・・・。
実際の臨床で心がけたいこと
上記のような講義を受けたり,教材を使う(A Practical Approach to TEEとOtto。この二冊は読破しました)だけではなく,実際の臨床現場でトレーニングを積むことが重要であることは,PTEeXAMの性格からみても明らかです。
現実に,PTEeXAMでの成績が,3ヶ月以上のトレーニング,一週間あたりTEEの施行・解釈を少なくとも6例以上行っていることに正の相関をしていることが示されています(Anesth Analg 2002;95:1476-82)。
しかし,日本で週6例というのはなかなか大変です。
少ない症例から多くを学ばなければなりません。
そのためには,漫然と診るのではなく,自分の判断の根拠を明確にすること,所見をつけることをお勧めしたいと思います。例えばMRなら,ただ何となくmildぐらいというのではなく,逆流ジェット面積でもPISAでも,肺静脈血流でも,何でも良いのでなぜそう診断したかを明らかにする。このように症例を重ねることで次第にMRの重症度が身につきます。しかも,このようにして身につけた知識はなかなか忘れませんし,eyeballingにも役立ちます。ただTableを記憶するだけでは,試験には役立つかもしれませんが,臨床には役立ちません。
また所見をつけることで,自分の判断の根拠を明確にするトレーニングになります。
このように経験を積み重ねていくことで,診る速さも自然に身に付いていくでしょう。
しかし画像に現れているものが何かをわかるだけでは,PTEeXAMに合格するには足りません。SAMがあることがわかったのなら,次にどうするか? CABGの患者にmoderateのMRがあったときにどうするべきか? CPB中に心臓が張ってきた時に何をすべきか? MVRの後でParavalvular leakageがあった時,どう判断するか?
こういったことを知っていて初めてTEEが臨床に,患者さんのために役立つのです。
「TEEは患者さんのために役立ってなんぼ」と仰った先生がおられましたが,まさにその通りだと思います。そのためには各々の病態生理や自然史,術式についても勉強する必要があります。
これから受験される方に少しでも参考になれば幸いです。
Good luck!
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