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TEE Case 08: OPCABで… [TEE_case]

72歳男性。労作性狭心症に対してOPCAB(LITA-LAD, RA-PL, GEA-4PD)
が予定されました。無治療の慢性心房細動,慢性腎不全,高血圧を合併しています。
麻酔導入も無事に終了して,手術開始。
相棒である下の先生がTEEをするのを見ていました。

相棒:先生…。
私:ん…ちょっと待ち! もう一度ようく見てみ!

私:どの角度でも丸やね…
相棒:ということは…
私:そういうことやな
私:左心耳の血流も測ってみよう

ちなみに左心耳血流速度は14cm/secでした。
相棒:どうしましょう?
私:どうしましょうって…。手術はOPCABやしなぁ。

ほんとに,どないしましょう?

相棒:先生,術者の先生に言いますか?
私:あたりまえや。しっかり画像出しとき。
  先生,左心耳に変なもんが見えるんですが…。
  おそらく血栓やないかと…。これ見て下さい。
術者:えっ…。うーん。ホントですね。血栓ぽいですねぇ。
   Afで抗凝固されてなかったから,不思議はないよねぇ。

というわけで,術者の先生方に報告し,どうするか話しはじめました。
術者の先生とは気心がしれているので躊躇はありません。
Graftのharvest中でしたが,手を止めて議論。
術者も困惑の表情です。

私:よくみるとぷよぷよ動いていますし,脱転の時に飛んでいっちゃうと
やばいですよね。
術者:脱転せずにそっとLITA-LADだけつないで逃げるか…。
助手:Off pumpで血栓をとれませんかね?
術者:いやあ〜。だってなあ…。

みんなでいろいろ考えて,ご家族にも説明して,
体外循環・心停止とし,血栓除去を行い,on pump beatingでCABGを行う
ことにしました。

術後の左心耳の像です。左心耳の出口がふさがれているのがわかります。

左心耳は血栓の好発部位として知られますが,左心耳の内部には櫛状筋があり,
血栓と肉柱の鑑別が難しいことが多々あります。
正常の左心耳はこんな感じです。

正常の左心耳血流は50cm/sec以上で20cm/sec以下になると
血栓形成のリスクが高まるとされています。

実は私もinitial checkをしていたのですが,左心耳はあまり見てませんでした。
相棒くんの大手柄です。
これ以来,私はAfの患者では左心耳はinitial checkでしっかり見るようになりました。


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コメント 2

GuGu

はじめまして,讃岐先生のサイトのリンクをたどって参りました.
もう少し血栓が左心耳先端の方にあれば,OPCABのまま左心耳にクランプをかける気になったかも知れませんね.
当方JB-POTは取りましたが,症例数の少ない施設なので,このブログのTEEの症例呈示,楽しみにしております.
よろしくお願いします.
by GuGu (2007-11-11 19:02) 

nagare-anes

GuGuさま
コメントありがとうございます。

Off pumpで血栓をとりにいくという案も検討したのですが,
脱転の際に飛んでいくと危ないね…ということでボツになりました。

今後ともよろしくお願いします。
by nagare-anes (2007-11-17 08:09) 

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