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TEE Case 10: たかがPFO,されどPFO [TEE_case]

今年最後のTEE Caseです。
70歳女性の労作性狭心症に対してOPCABが予定されました。
CAGの結果は#1 90%, #4PD 90%, #6 75%, #9 90%, #14 90%で,
左室収縮能は問題ないようです。
LITA-LADの吻合が終了してSVGを上行大動脈に吻合した後,
D1,PLと順調に吻合して,最後のRCA#3の吻合中にSpO2が低下している
ことに気がつきました。

その時のME bicavalの画像です。

何か変わったことはありますか?

ちなみに術前はどうだったかというと…


実はOPCABで心臓を脱転中にもともとあったPFOがL-R shuntからR-L shuntに
なってしまっていたのです。
OPCABの脱転時に右房圧が左房圧を上回ることでR-L shuntが生じ,低酸素血症の原因となるという報告
(Ann Thorac Surg 1999;67:546-8)
もあるのですが,本例では対角枝を吻合中のP/F ratioが270ぐらいだったのが,RCA#3吻合時には150ぐらいに下がった程度です。
この方は割とぽっちゃりしてる方なので,無気肺にの形成で酸素化が悪くなった可能性もあり,PFOのR-L shuntでDesaturationになったかどうかは???です。

さて,PFO(Patent foramen ovale:卵円孔開存)は剖検例の25%,TEEでは20-30%に認められると報告されています。

心臓手術中に偶然PFOが発見された場合にどうするか?
PFOが原因で奇異性塞栓症や低酸素血症を来す可能性はありますが…。
本例のようにOff-pump CABGだとpump conversionをしなければなりませんので,当然PFOを閉鎖するためにはriskを伴います。
したがって,術中に偶然見つかったPFOの扱いはPFOが残存した場合の危険性と,PFOを閉じる危険性を勘案する必要があります。

@周術期に(PFOによる)低酸素血症の危険性が高い
 LVAD植え込み術,心臓移植→必ず閉鎖する
 私は移植の経験はないのですが,LVAD植え込みでは必須のチェック項目です。
@右房の切開を伴う手術
 僧帽弁手術,三尖弁手術→(ついでに)閉鎖されることが多い
@他の心臓手術
 大動脈弁手術,CABG(on or off-pump)→risk factor*がある場合には閉鎖
 *例えば大きなPFO,奇異性塞栓症の既往,心房中隔瘤,R-L shuntなど
(Anesth Analg 2007;105:602–10より)

SukernikらはOPCAB中に発見された11例のPFOのうち心臓脱転中にL-R shuntが
R-L shuntに変わったのは2例で,いずれもDesaturationを来すことはなく,
PFOがあったとしてもほとんどの患者では安全にOPCABを遂行できるだろうと
述べています。(Anesth Analg 2002;95:1142–6)

本例でもそのままOPCABで手術を終了しました。
脱転後はR-L shuntはL-R shuntに戻りました


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コメント 2

tsunetann

一年間,いろいろな画像の提示ありがとうございました.今度は,過去の画像にアプローチしやすいようにArchiveをまとめてくださいね.

この画像も,脱転の時期にはMRの方にばかり気が取られますが,なるほど中隔の動きなんかでも気がつきそうですね.

これからも,いろいろと教えてください.
では,よいお年を!
by tsunetann (2007-12-31 22:26) 

nagare-anes

ありがとうございます。
また今年もぼちぼち出していきたいと思っていますので
よろしくお願いいたします
by nagare-anes (2008-01-03 17:02) 

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