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医龍とTEE [TEE]

先週の医龍を読んでみると,こんな場面があった。

外傷による心損傷修復のために,妊婦が人工心肺を使用して手術を受けていた。
手術も無事終了し,人工心肺からも順調に離脱。
しかし聞こえていたはずの胎児の心音がモニターできなくなってしまう。
ざわつくオペ室。
しかし麻酔を担当していた朝田は,TEEのプローブを抜き,患者のお腹に当てる。
エコーの画面には元気な胎児の姿。
胎児が動いたために心音が聞こえなくなったのだ…


記憶にたよっているので,かなり不正確かもしれませんが。

しかしホントに見えるのだろうか…と,当然疑問に思ったのでありまして。
TEEのプローブは体外用と比べて周波数が高いので,あんまり奥の方は見えないのです。

実際に試してみました。
まずは頚部。
rt_cerv_1.jpg
深さもそんなにないので,見えるかなあとは予想していました。
ドプラーも使えたので,もしかすると活用の道があるかも。

そして肝心の腹部。
liver_1.jpg
驚いたことに,結構きれいに見えました。
これなら胎児も見えそうです。
ちなみに左の腎臓も診てみました。
lt_kidney_1.jpg

心臓も体表からみることができました。
TEEの意外な使い道が…。

ちなみにこの画像の被検者は私です。





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コメント 6

tsunetann

どんな人が原作を書いているのか知りませんが,すごいね!
妊婦の人工心肺のパターンは考えたこともありませんでした.

Pubmedで pregnancyとCPBで調べると結構ヒットしてきます.
胎児の死亡率がおおむね10%くらいでしょうか?母体の方はもちろん大丈夫のようです.なるべく心配時間を短くしろと書いてありますね.

人工心肺下に帝王切開したら止血は難しいでしょうね.
by tsunetann (2008-04-15 08:46) 

GuGu

 これ,わたしもやってみたことがあります.TEEを胸壁に固定して左室の短軸像をモニターできるようにしてました.
 脊麻や硬麻主体の患者さんでも使えるので,便利かなと思ってました.でも,固定の方法が,なかなか難しく後が続きませんでした ^^;).
 国楯の大西先生が,小児例で実際に使っているのをビデオで発表しているのを見た覚えがあります.
 昔,P社の宣伝ビデオで,未来のエコーとして胸壁に貼り付けるバンドのようなプローブで,3次元エコーを映し出していました.こんなエコーがあれば便利でしょうね.
 医龍の場合,エコーの器械にはいさぎよく,他のプローブはついていなかったのでしょうか?とつっこみ.
by GuGu (2008-04-16 23:16) 

nagare-anes

tsunetannさま,GuGuさま
コメントありがとうございます。
考えてみれば見えて当たり前と言えないこともないのですが,
実際にやってみたことはありませんでした。
固定法を工夫するといろいろなことが出来そうですね。

この実験?をしているときに,いろいろな人から,他のプローブで
見ればいいのに,とつっこまれました。
私のところの機械でも,普段はTEEと血管穿刺用のプローブぐらいしかついてないことも多いので,あながちありえない状況ではないです。

妊婦の人工心肺はこれまで経験はありません。
人工心肺の流量をどのように考えたら良いのか
難しいですね。


by nagare-anes (2008-04-17 00:06) 

clonidine

妊娠中の非産科手術中の胎児モニタリングとして、「TEEプローベを腹に貼り付けて固定し、胎児心臓を観察する」というのは、「単純に心拍数をカウントする」レベルならば可能ですが、「臍帯血流を捕捉し、PW/CWを駆使して定量的な計測をする」レベルでは、それなりに胎児エコーに習熟した医師が、腹部に10分以上張り付いてプローベを操作しなければならず(=手術のジャマ)実際の臨床上は困難だと思いますよ。「胎児心拍数カウント」だけでしたら従来の産科ドップラーだけで可能ですし、「臍帯血流の低下を診断」しても、治療法はあまりありませんしね(ここらへんの理屈は大血管手術の脊椎モニタリングに通じるものがあります)。

その他、Aloka社などのmulti purposeエコーでは、TEE/TTEだけでなく経膣エコープローベが装着できるものもあります。胎児週数にもよりますが、医龍のCaseだったら「TEEプローベと経膣プローベを挿入しておき、術中必要に応じて切り替える」のもありかなあと思います。

それにしても、朝田の麻酔管理はいただけませんなあ。胎児心拍の正常値は140±20で、マンガの症例は(常温体外循環ならば)明らかに異常な胎児除脈です。「体外循環の流量を上げMAPを上げる」「拍動流にする」などの対策が必要です。

「体外循環離脱時にPGE1」というのも、プロスタグランジンには子宮収縮作用があるので妊婦では基本的に禁忌です。血管拡張薬が必要ならば、子宮弛緩作用のあるNTGやCaブロッカーを選択すべきです。
by clonidine (2008-04-17 00:33) 

clonidine

と、もっともらしいことを書いていますが、私も「母児救命を目標とした妊婦の体外循環」の麻酔管理は経験がありません。(「肺塞栓妊婦にPCPS」「帝王切開→そのまま開心術」「分娩→PCPS→LVAS」だったらありますが・・・)

私が以前に文献検索した限りでは、わが国では「妊娠中の体外循環手術→母児ともに無事」はありませんでした。「体外循環手術中にIUFD」「体外循環手術に成功したが、母が児の障害を懸念して中絶を選択」というのはありましたが・・・J医大の皆さんには、ぜひがんばっていただきたいものですが、世の中ここまで産科崩壊が進んでしまうとそれどころではないのでしょうね。
by clonidine (2008-04-17 00:50) 

nagare-anes

clonidine先生,コメントありがとうございます。
先生の仰るように,さすがにPWやCWでの評価は難しいでしょう。
医龍では心臓が動いているかどうか見てるだけでしたね。
(HLHSらしいですが…)

妊婦の体外循環…考えるだけでも怖いですね。

by nagare-anes (2008-04-20 19:11) 

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